「ただいま、戻ってまいりました。はい。通常営業です。」
2021年10月22日金曜日から京都府下の飲食店は通常営業を再開しました。行政からの協力要請は感染予防対策についてのみ残り、営業時間や酒類の提供などの制限要請は21日木曜日に解除されました。前回の通常営業最終日は2021年4月3日土曜日でした。4月5日月曜日から「感染防止協力要請」が再開され、10月21日まで制限の解除はありませんでした。この4月の全面制限解除期間は3月22日日曜日から4月4日日曜日という短い期間でした。
「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づき行政と政府から発出された営業制限。京都市は2020年12月21日月曜日から制限が始まりました。振り返ってみると2021年の今年にイルピアット紙屋川が通常営業したのは今日10月23日日曜日時点で「12日間」です。私のお店は日曜日と月曜日が定休日のため、この日数です。週休1日の店舗や定休曜日の異なる店舗によっても営業日数は変わります。12回しかきちんと営業ができていない事実は、振り返って調べないと分かりませんでした。
業者との取引も細くなりました。彼らも、いや、彼らこそ苦痛を伴う時間だったと思います。発注をしたくても難しい状況が続きました。テイクアウトやデリカテッセンも経験しました。なるべく業者のロスになりそうな材料などの調達を優先もしました。できることは積極的にしてきたつもりですが、制限期間の延長に次ぐ延長で暗い気持ちになることもありました。取引業者の皆さんにとって今回の制限解除が業績回復に繋がることを祈るばかりです。
私個人の感想を吐露すれば、イルピアットスタッフたちが心配でした。充分に働けない。働かせてあげられない。2月には「ともちゃん」と「おすぎ」が紙屋川を引退しました。彼女たちも制限下での最終日でした。本当なら盛り上がって花道を作ってあげたかった。彼女たちを引き継いだ、おはる、たいま、Nちゃんもまた、通常営業ではないアルバイト時間の中を過ごしてきました。円町のスシボンはコロナ感染も経験し、休業も繰り返すような制限下でも腐らず今日に至ります。
アルバイトスタッフたちは誰をとっても尽力してくれました。私からの難しい要請にも快く応えてくれました。コロコロと変わるアルバイト時間にも理解を持ってくれました。私は彼らが活躍する時間をもっと用意したかった。開店休業状態の日もありました。いつかの賑やかな紙屋川の経験を重ねることで身に付けられる感覚や自信は、彼らが引退した後の支えにもなります。これからそれを取り戻すかのような賑やかさが訪れるように、私も努めたいと思います。
ランチタイムメニューを刷新し、アルバイトスタッフも配置して新しい展開が始まりました。新しいアルバイトスタッフも加わります。年末年始に向けて作業への順応性を高め、紙屋川を盛り上げる準備は着々と進んでいます。私自身、朝8時30分から午前1時までの作業には疲れを覚えました。以前はこんなに疲れたろうか。今は充実感も伴うので苦ではありません。47歳の私にとって、このペースをいつまで続けられるだろうかと考えるものでもあります。
今年はまだ12回しか通常営業ができていません。コツコツと回数を増やしてゆきたいと思います。アルバイトスタッフも変化を持ちながら、明るく作業をしています。料理の展開も、他国料理の基本的な調理技法を勉強していたりします。基本的な調理技法に込められた伝統をイタリア料理にアレンジさせて、紙屋川らしい内容に昇華できればと思います。ランチにもディナーにも、料理の面白みをお伝えできればと思います。
新聞の切り抜きをいつ辞めようかと考える日々です。情勢の情報収集に最も効果を持つ新聞。数年後に「いま」を振り返る材料が欲しくて始めました。切り抜きには時間が掛かります。この時間を仕込みに回さなくてはなりません。事務作業も多く、仕入れもあります。SNSを利用する時間も少なくしたいです。「トニーチャレンジ」もきちんと再開したいです。読みたい本も多く貯まりました。行きたいお店もたくさんあります。したいことと、できることの選別をきちんとしなくてはなりません。通常営業に戻った途端に、欲張りになりました。
欲しかった時間。取り戻したい日常。コロナ禍になって「日常」がぐらぐらとしました。その中でも「日常」は続きました。そして変化や制限に順応する形で「慣れ」てきました。慣れた日常様式を静かに整え直す作業が始まっています。変化したまま、慣れたまま。以前とは違うけれども「自分が描いていた日常」を整える段取り。私は今朝にした衣替えをきっかけに、日常のダイヤルが「ガチャっ」と回った気がしました。
起きてきた変化をこうして乗り越えようとしています。まだ充分ではありません。ですが、今日、ここにいます。無傷ではないけれど、通常営業を再開できたことを嬉しく思っています。私は日常が制限などで変化したことを「自分で選んだ」と強気で解釈しています。コロナ禍でなくても、私は変化しました。今とは違うものだろうけれど、変化はしたのです。今回は難しい変化でしたが、立っていられて良かったです。
なんだか取り留めのない内容になってしまいました。通常営業に戻り、これから自分の頭が冴えてくることを願うばかりです。なまりきった身体を傷めつけてもう少し強くなろうと思います。勘が戻り、クリエイティブに紙屋川を展開できるようにします。できていないこと、やりたいこと、たくさんあります。感染予防対策は面倒なものですが、何かのプレイだと解釈しています。どうか、お付き合いください。
やっと。やっとです。ここからが「今年」の始まりと言っても過言でない。来年にも大きな変化が待っています。私は変化することで生き永らえて来ました。難しい変化も、独自の解釈で読み解こうと思います。私の解釈話しは面倒くさいものですが、くだらない話を聞きながら飲む酒は格別です。カウンター席をご用意してお待ちしています。皆さんのお話しも聴かせてください。
さあ!ようこそ。イルピアット紙屋川へ! トニーでした。