引退を自分で決めることについて。
久しぶりに文章を書こうと思います。今日は2023年8月13日日曜日です。時刻は10:35。いまは紙屋川2階の事務所机でキーボードを叩いています。1階ではお店の内装工事が始まっています。厨房とホールの境界線を設ける工事です。天井から90センチの垂れ壁を設置します。お店の印象がガラリと変わる工事です。
当初は厨房に棚を設置する案でした。吊り棚を設置する相談の過程で垂れ壁での仕切り優先ということになりました。垂れ壁ができると広く感じていた空間は小さくなる効果が期待できます。紙屋川の開店当初から言われていた「広くなったね」という印象もこれで変わるものと思います。円町のような狭小空間にはなりませんが、居心地は良くなるはずです。きっと。
厨房の上に壁が登場して初めの方は違和感もあると思いますが、これからの展開を睨むと良い効果になると思っています。9月からのメニューにも変化が出ると思います。屋台のような店内になるので、気軽さも増すと思います。とっつきやすくなると思っていますが、また皆さんの感想などを聞いてみたいです。
私は昨年の8月休業を経て、お皿を更新したり朝営業を始めたりしました。昨年9月から常時朝営業が始まり、今年の3月頭から土曜日だけの朝営業に移行しました。季節で言えば朝の始まりが遅くなる季節に頑張って朝を開けていた訳ですが、思ったような展開にはなりませんでした。
10年後にかの子さんが自立して家を出た際に、「あいこさんをひとり家に残す日常は嫌だな」という想像から朝の開拓を試みました。ゆくゆくは朝昼だけで暮らして行ける営業をイメージしましたが、何もかも足らなかったようです。朝から営業するなら思い切って喫茶店にしなくてはならいでしょう。もしくは、行列ができるような看板メニューを考案して集客することがいいでしょう。喫茶店はしてみたいことですが、行列を作るようなメニュー考案は嫌だなぁ。いずれにせよ、求める未来と現実との差異は埋められませんでした。
私は5年後の2028年6月7日あたりを目処にお店を引退しようかと計画しています。イルピアットの屋号をどうするかとか、お店を潰してしまうとか、そういうことは何も決まっていません。恐らくお店は潰しません。今日もこうして内装工事をしてもらっています。重要なのは自分の働き方を変えられるかということです。引退時期を自分で決めたい。いまはそのように考えています。
49歳の私は来年の2月に50歳です。生命保険の担当者と話す時に「水谷さんはいくつまで働きますか?」と尋ねられました。何歳まで働くんだろう。65歳くらい?などと答えていましたが、自分でもはっきりと分かりません。自営業は定年がないと言いますが、定年がないだけで引退はいつか必要です。もちろん死ぬまで働くこともできます。それもいいかも知れません。私は自分で引退を決めたいな、と思いました。
きっと働くのはずっと働くんです。でも厨房で朝から晩まで働き続ける働き方はどこかで辞める必要があります。身体が壊れるまでとか、売り上げが振るわなくなるまでとか、年齢がそれなりに重なったからとか、そういう引退の仕方が自分には向いてないと思います。いまはとことん働きますが、こんな働き方は続けられません。引退時期を決めないと結局は身体が壊れるとかそういう状況まで諦めないと思います。それが嫌でならない。
では、どうするか。どうしましょうか。さっぱりと分かりません。何ができるだろう。どうすれば生計を立てられるだろう。私はレストランを19年間して来ました。答えを出すなら、レストランは分かりました。では、他に何ができるだろう。この問いは49歳の今でも、56歳になっても、65歳になっても、同じように立ちます。その証拠に、39歳の自分は同じ問いを立てていました。当時は「終わることのイメージ」が弱かった。自分が歳を取ることの実感などずっと先だと思っていました。
この感覚は年齢を重ねても同じです。きっと変わらない。60歳になった私は「あと5年で引退」と何となく言うでしょう。ではその時に、65歳になった自分の想像がきちんとできると思いますか?私には想像できる自信がない。きっと今と同じでしょう。そして年齢だけが重なり、何となく辞める雰囲気になる。周囲も「もう歳だしそろそろだ」なんて変に納得する空気が生まれる。私はそういう事が耐えられない。
「あと5年ほどしか料理が作れない」としたならば、私は何を作るだろうかと問いを立てています。まだ先のようで、実は、あっという間に5年という時間は過ぎます。この5年間がそうであったように。大切なのは、期限を意識して暮らすことかなと思うのです。「自分にはタイムリミットがある」という学生諸君のような期限が欲しい。アルバイト諸君の引退を見るにつれ、私にも引退する設定が必要だと実感します。
自営業は定年がありません。ですが、プレイヤーを引退する必要はあります。自分でリミットを決定することは難しくはありませんが、実行することはとてつもなく怖くて難しい。長年働いた会社を退社するような感覚です。しかも私には次に何をするのか、できるのか、全くわかっていません。5年後、無職になる。この設定はゾクゾクします。
大学に入学すると4年間で卒業し学位を得ます。あと5年もあるので大学一回分と思うようにしていますが、いまは受験生のような気分です。来年の6月7日には志望校を決めていなくてはならないかも。この1年間をどう過ごすかでその先のいろいろは決まってくるような気がしています。今日の店内改装もこの先を考えるための一環です。あと5年間の料理。2028年6月7日にクビになるとしたら私は何をするだろうか。
こう考えるだけで「いま」にしがみつきたくなります。現状を捨てきれない自分を嫌と言うほど思い知ります。今の暮らしを捨てないためにも、維持するためにも、働き方を変えなくてはなりません。手始めに、週休3日を目指しています。週定休3日、週4日営業が実現できれば理想的です。5年後、そのような営業態に移行する程度で収まってしまうかも知れません。それでも、きちんと成果を出して違うものに成れているならいいと思います。
引退を自分で決める。2023年に立ち上がった計画です。5年後に引退できていなければ「そういうものだった」ということです。計画が早まることは一向に構わないので、叶うなら3年後くらいがいいです。それまでに「レストランを起点にした社会の仕組み」について文章でまとめられたらと、いま進めています。皆さんに読んでもらうまでに平易で分かりやすいタイトルを付けられるようにしたいと思います。
久しぶりにつらつらと書きました。お読みくださりありがとうございます。私は叶うなら、ゆくゆく再び大学へ戻って勉強したいと思っています。聴講生で構わないので、自分の考えたことをまとめられたら最高だなと思います。それまではとことん働いて、どっぷりとレストランをしたいと思います。台風7号が嫌な進路です。お盆最中の台風は嫌な存在です。皆さんも気をつけてお過ごしください。