イルピアット紙屋川の休業について
こんにちは。いまは2020年4月1日水曜日15時6分です。外は雨が降っています。京都は桜が満開です。今年は桜を見に出かけていませんが、SNSなどにアップされる写真から満開だと伝わっています。花は気持ちを象徴するので、今年の桜はいつもと違う見え方をしているのだろうなと思います。桜を存分に思い切り楽しみたいなぁ。誰に気を遣う事もなく、堂々と桜の木の下で下手くそな弁当でも作って、ワインとか開けて、友人らとバカ笑いして、桜を見に来たのか楽しみに来たのか分からない気分で、「桜が引っ張り出したね」とか語らいたいなぁ。
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昨日、長文を書きました。5500文字くらい。読んでくださった皆さんには感謝しかありません。こんな拙い文章にお付き合いをくださりありがとうございます。私が考えていること、思っていること、伝えたい決めたこと、そういう背景を少しでも説明できたらと思って書いています。私は(実は)文章を書くことが好きです。これは大学時代にレポート提出で鍛えられた成果です。考えていること、調べたことを論理的にまとめ上げる作業は気持ちよかったです。
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「今日は通常営業をする」と昨日、宣言をしたのにできませんでした。期待を寄せてくださった方にはがっかりとさせてしまいました。本当に申し訳ないと思っています。本当にすみませんでした。「「飲食業は日常を支えるしんがり」ということまで書き放ったのに、翌日にこれかよ。」なんて、言ってください。その通りですから。私は日常を支える思いであることは変わりません。そして、それを諦めてもいません。しかし今が「日常だろうか」という気持ちで一杯になってしまいました。とても情けない話です。ですが聴いてください。
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日常とは、本当に当たり前のように過ごせている風景でした。何の不安もなく通勤し、仕事をし、成果を上げて、打ち合わせもし、帰りに飲んだりして、心配なく帰宅できる。ああ、まさに日常です。コロナの感染拡大に伴い、ここ京都でも今週になってから一気に緊張が高まりました。日常は日常の顔も姿も変えたように思います。日を追うごとにその重さと緊張は決断を迫りました。昨日と今日の違いがはっきりと分からないのに、「これでいいのかな」という気持ちだけは増大しました。「本当にお店を開けていていいのだろうか。」
今朝、ランチの仕込みと準備をしていると井倉木材の井倉さんが顔を出してくれました。開口一番、「どうします?」でした。そうだよなぁ。やっぱり、そうだよなぁ。私は堂々と「ウチは今日から通常営業にするで」と言えませんでした。井倉さんと向き合って誤魔化せない気持ちを確認してしまった。「どうしようか、実は迷ってるんよね」という本音が出ました。井倉さんと色々と話しました。待っていても政府は緊急事態宣言を出さないだろう、自分たちで考えて自衛するしかない、細かな注意をお客さんに求めながら作業するってだけで滅入ってしまう、そんな話をしました。
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「こんな気持ちで料理してていいのかな。」この言葉からは逃げられない気がしました。朝、厨房に入ってパンを作りながら「いつもと同じだ。これが日常だ。日常はここにあるじゃないか。」と言い聞かせました。しかしどうでしょう。次の作業に移れない。店内を掃除して、ランチのセッティングをして、再び厨房で仕込みに手をかける。身が入らない。そうしていたら井倉さんが見えました。話をしていてどこの飲食店も同じ気持ちを抱えている事を強く、強く思いました。「こんな中途半端な気持ちで料理はできないな。」とても悲しい気持ちです。
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どの飲食店も、どの業種も、どの仕事も、誰もかれも、全然すっきりしない。「自粛」という宙ぶらりんな言葉の後に「感染を最大限に防ぐ処置をして営業してください」と言う。京都市のページにそう書いてあります。最大限と言うなら「動くな」と言ってくれればいいのに。はっきりと「営業するな」と言ってくれればいいのに。アルコール消毒をしようと、マスクをしようと、距離をとっても、換気をしても、何かのタイミングで感染は起こってしまう。最大限の注意を払っても感染をしたら「努力したけどダメでしたね」と寂しい眼差しを向けられるのでしょう。政府は、行政は、こんな生殺しの状態に私たちの暮らしを追いやって本当に感染を防ぐ意思があるのだろうかと苛立ちも覚えます。
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どの飲食店も悩んでいます。私だけじゃない。決断して休んでいるお店も増えました。私のお店も実質、定休日を挟み日曜日から休んでいます。このタイミングでの休み方としては、感染リスクを遠ざけることができています。しかし、こんなモヤモヤした準備の日々はもう、うんざりです。行政が決めないなら自分で決めるしかない。京都市で感染拡大が防げたなら、それは行政の成果なんかじゃない。行政は何もできていない。これは市民ひとり、ひとりが犠牲を払ってそれを獲得したのだと理解します。
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私たち飲食店が休業する決断を単なる「お休み」かのように捉えて欲しくはありません。断じて違います。断じて、ちがう。私たちは皆、苦渋の決断です。飲食店だけじゃない。クラブも、ライブハウスも、バーも、美容室も、花屋も、ホテルも、全てのサービス業は悩みに悩んでいます。きっと全ての職業がそうです。売り上げの心配も、この先のテナント料金も、売掛金の支払いも、借入金の返済も、従業員の給与も、所得税の納税も、消費税や法人税の納税も、保険料金や市府民税も、全部ぜんぶ、皆が悩んでいます。無利子無担保で借入ができた先にも、じゃあいつ再開するのかという問題があります。あまりにも先が見えないままです。
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だからと言って、いま営業を続けるマインドにもなれません。こんなモヤモヤしていて、お店を営業して、料理を出していいかも分からない気持ちになるなんて。「その日常がもう違うんだぜ。」なんてことだろう。コロナウィルスめ。早く薬ができないものか。再開の目途も立ちませんが、このまま営業をすることでお客さまが外出するきっかけを生み出すことも良くありません。キャンセルをお願いするご連絡をしたら、「どうしようかと迷ってたの」という声ばかりでした。迷ってのご利用を考えて見えたのなら、こちらからキャンセルをお願いしてよかったと思いました。外出の機会を減らすことは感染拡大の効果があります。
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休みにした昨日。かの子と過ごしていて考えていました。新小学3年生。私は彼女に伝えたいこともたくさんあります。ああ、一緒に過ごしていたいな。コロナで悩んでばかりじゃなく、すっきりと休みを決められたら一緒に過ごせるのに。そうしたら、かの子も不安を抱かないだろうに。一緒に読書して、文章を書いて、「あつまれ!どうぶつの森」をして、食事を作って、おしゃべりして。私はかの子と過ごしておきたい。こうした気持ちも私を休業の決断へ導きました。
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私は結論、「人が動かないのが一番」という答えを採用します。イルピアット紙屋川は当面、休業いたします。再開の目途や方法などは未定ですが、必ず再開いたします。次に皆さんとお会いするときには笑って乾杯しましょう。再開するときは思い切りパーティーとかしたい気分です。少しの間、失礼します。お元気でお過ごしください。
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それでは次回、紙屋川でお待ちしています。
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イルピアット紙屋川 トニーミズタニヨシオ