5.同じ方向を見ているからと、思想や理念まで同じとは限らない
ネットのニュースに「過激派 福島大で暗躍、「反原発」で活動家養成 NPOで資金集め」というのがありました。。出所はMSN産経ニュースです。私は個人的に産経は好きではありません。ですが、この記事はきちんと読みました。
いわゆる「中核派(革命的共産主義者同盟全国委員会)」が反原発運動に乗じて人員を増やしているという記事でした。
少し前の投稿で「同じ方向を見ているからと、思想や理念まで同じとは限らない」と私は言いました。反原発と考える人はたくさんいます。しかしその人々が皆、同じ思想や理念ではありません。
1970年代、いわゆる「学生運動」が衰退していった背景には、三派全学連と全共闘による学生運動はあたかも「同じもの」であるように報道され、一般大衆が学生運動を支持しなくなって行ったことがありました。
三派全学連(共産主義者同盟、革命的共産主義者同盟全国委員会、社青同解放派の全学連)にある中核派の活動では「内ゲバ」と呼ばれる、思想と理念を同じにできないものに対する暴力と粛清がありました。100人くらいの人がこの内ゲバの犠牲になり、加えてよど号ハイジャックや浅間山荘事件なども重なり、結果として学生運動は支持を失い、求心力も無くなってゆきました。
学生運動は大学によって主張も思想も様々ですが、社会現象として語られる際は一緒くたにされています。学生運動は当時の社会現象の名称であり、その詳細な活動の差異までは表したものではありません。しかし、印象として結果的に過激派の活動が重ねられています。バリケードを張ったり、ボイコットをしたり、外ゲバをしたり、デモをしたりという活動は、三派全学連も全共闘も展開した事でしたが、同じ思想と理念と目的ではなかったのです。
今回、中核派が反原発の運動に触手を伸ばしているという記事を読み、学生運動時の衰退現象を思い出させました。同時に、共産党とこの中核派は(実は)対立する組織なのですが、同じ「共産主義」を掲げているので一般的には区別ができません。この一般的には区別ができていないことを日本共産党は甘く見ています。ですから、日本共産党の活動は印象として過激派であるように見られてしまいます。
反原発のデモをしたり、抗議をしたり、様々な活動をしたりする事があたかも「共産党」であるかの印象を持たれるような表現が多くあります。わたしは共産党員でも、共産主義者でもありません。ですが、デモ参加したり、何か連帯するときに「共産党」と掲げられた場面に居たのなら「ミズタニは共産系だよね」と見られても仕方ないかなと思います。
このことは、私が「そうではない」と思っていれば済む事ではないのです。私の印象が何かしらの政治的意図や、偏った思想主義を標榜しているというものから出発しては困ります。ひとつずつ説明して回れませんし、そんなことできません。日本共産党はこの点において、そうした印象を受けているという自覚がない為に支持を拡げられないと私は分析しています。
例えば、私が「共産党系」であるという印象が定着したら次は、「過激派」です。世間(大衆)は詳しく問題のひとつずつに取り組みませんから、大体の問題は「印象」でしかないのです。その印象から得られた印象に、更なる印象を重ねて行きます。その結果、出所が何であったかなんてわからない事がたくさん生まれます。そういうことがたくさんあるのですが、印象ですから、深く追求したり調べたりしません。今は過激派の活動が沈静化していましたから、共産党と過激派を同じ印象に結びつけるものは「共産主義」という事だけですが、中核派が反原発活動に加わり利用し始めれば、大衆の印象は変化してゆくでしょう。
反原発 = 共産党系 = 過激派 という印象を作り出してゆくことは、難しくないと思うのです。
先にも述べましたが、学生運動のバラエティーさを一般大衆は知りませんでした。同時に、している活動や主張が似ていれば尚更、区別などできないのです。おそらく、参加していた学生運動参加者でさえも理解していなかった人間は多数いたはずです。それは今も同じで、反原発という思いだけで活動していたのに「いつの間にか日本共産党員になってしまった」とか、「いつの間にか中核派に入ってしまった」とかいう現象は生まれると思うのです。
もう一度言いますが、
同じ方向を見ているからといって、思想や理念まで同じとは限りません。
今回の産経ニュースを見た際にも思いました。マスコミは印象操作を図れるのです。「○○と○○は同じ感じ」という報道には意図が働いています。反原発を骨抜きにするためのニュースも、選挙で当選する人間の印象操作も、マスコミはできます。
私たちはその情報が正しくて正確なものかを知るために時間を割けません。ネットニュースも新聞も日々刻々を変化します。その情報が多く発信される中で、やはり、「おかしい」と引っかかった際には歴史を振り返りましょう。何があったのかを調べる事で、「なんとなく」が「なるほど」に変化します。
イルピアット ミズタニ